生活習慣病とは
生活習慣病は、食生活の乱れ、運動不足、過度の飲酒や喫煙など日常生活の習慣が積み重なることで発症します。主な疾患として、脂質異常症(高脂血症)、糖尿病、高血圧、痛風などが見られます。症状を放置すると、心筋梗塞や脳梗塞などの重篤な疾患につながるため、定期検診によってご自身のリスクを把握し、生活習慣の見直しを行うことが大切です。
生活習慣をチェックしてみましょう
運動不足や食生活の欧米化などの影響により、日本では生活習慣病が増加傾向にあります。多くの生活習慣病は、初期段階だと自覚症状がありません。患者様が気づかないうちに症状が進行し、重症化すると脳や心臓に関する合併症リスクを高めます。そのため、健康診断を定期的に受診し、体の状態を常に確認することが必要です。もしも健康診断で異常が見つかった場合は、早期の治療と生活習慣を見直すようにしましょう。
こんな生活習慣はありませんか?
- 常に睡眠時間が不足している
- 仕事や家事などでストレスが多い
- 定期検診や人間ドックで基準値を超える結果が出ている
- 血糖、血圧、脂質などが基準値に近い
- 肉やデザートばかり食べ、野菜をあまり食べない偏食の傾向がある
- 塩分や糖分が高い濃い味のものを好む傾向がある
- 食事は満腹になるまで食べ続ける
- 定期的に朝食を抜くことが続いている
- 深夜に食事を摂取することが多い
- 食事をあまり噛まない、早食いである
- 毎日の食事の時間が定まっていない
- ファストフードやインスタント食品、加工食品をよく食べる
- 間食が多い、常に何かを食べてないと落ち着かない
- ジュースやエナジードリンクなどの糖分が多い飲み物を頻繁に摂取している
- お酒を頻繁に飲む習慣がある
- 日常的にタバコを吸っている
- 移動の際はほとんどが車利用
- 日常的にエスカレーターやエレベーターを利用し、階段の使用を避けている
- 20歳の時から比べて10kg以上体重が増えている
代表的な生活習慣病
高血圧症
高血圧症は、血圧が持続的に高い状態のことです。血管内の圧力が増すと、心臓、脳、腎臓などの重要な臓器に負担がかかります。結果的に動脈硬化が進み、コレステロールが血管内に蓄積しやすくなり、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まります。高血圧には遺伝的要因が影響を及ぼすことがありますが、食生活(特に過剰な塩分摂取)、運動不足、慢性的なストレス、飲酒などの生活習慣も重要なリスク要因です。
高血圧が重症化したらどうなるか
高血圧が慢性化すると、血管壁に継続的なストレスがかかり続けます。結果的に血管の弾力性が低下し、動脈硬化が進行することで、血管内にコレステロールが蓄積されやすい状態になってしまうのです。
動脈硬化が続くと、心臓では狭心症や心筋梗塞、心不全など、脳では脳梗塞や脳出血などの脳血管障害や認知症になりやすくなります。
治療法
血圧が120/80mmHg以上の方には生活習慣の改善を行うことが推奨されています。もっとも大切なのは食塩摂取量の制限です。また野菜や果物に含まれるカリウムの摂取や定期的な運動習慣、禁酒や肥満の改善を行います。
高血圧は自覚症状がほとんどないため、自宅での定期的な血圧測定が重要です。生活習慣を改善しても血圧が下がらない場合はお薬による治療を行います。
また、高血圧の10%程度にホルモンや腎臓の病気や睡眠時無呼吸症候群などが原因となっている場合があり、若年で発症したり治療してもなかなか改善しない場合などは検査が必要です。
高脂血症(脂質異常症)
LDLコレステロールは血管内にプラークを形成し、心臓病や脳卒中のリスクを高めるのが特徴です。そのため通称「悪玉コレステロール」と呼ばれています。一方でHDLコレステロールは余分なコレステロールを肝臓に運び、体外に排出するため「善玉」と呼ばれています。高脂血症(脂質異常症)は、「悪玉」LDLコレステロールやトリグリセライドの過剰な増加、または「善玉」HDLコレステロールが減少している状態です。高脂血症は、食べ過ぎやアルコールの過剰摂取、喫煙、運動不足などによって発症リスクが高まります。
治療法
脂質異常症の治療は、基本的に食事療法と運動療法が中心です。適切な治療を続けることで、血液中の脂質のバランスが正常化します。しかし、食事療法と運動療法だけでは改善が見られない場合、薬物療法が必要です。最近では、高脂血症に対して効果的な新しい薬が複数開発されています。定期的に服用することで、動脈硬化や心臓病などのリスクを減らす効果が期待できます。
糖尿病
現状国内では糖尿病の患者数は増えつつあり、多くの人々がそのリスクに晒されている状況です。
糖尿病の初期症状として、多飲、多尿、体重減少などの特徴的な症状が現れることもありますが、糖尿病と結びつける方は少なく、健康診断の結果などにより初めて認識する方も少なくありません。
糖尿病にはインスリン不足が原因の1型糖尿病と、生活習慣の乱れが主因の2型糖尿病があります。
重要な合併症には糖尿病性神経障害、腎症、網膜症が含まれ、失明や人工透析に至る場合もあります。心臓病や脳卒中、がんとの関連も深刻です。
血液検査や尿検査で診断します。
治療法
栄養療法
栄養療法は、適切なカロリー摂取と栄養バランスの確保が鍵です。時間と手間はかかるものの、効果的な血糖管理を実現する上では欠かせません。当院では個々の患者様の健康状態や生活スタイルに合わせた食事計画を立て、血糖値のコントロールを図ります。
運動療法
糖尿病治療では、日常生活に運動を取り入れることが非常に大切です。運動をすると、筋肉がブドウ糖を効率的に使うので、血糖値をコントロールしやすくなります。歩行であれば1日8000~9000歩、週に3日以上の運動が望ましいとされています。ただし、運動の種類や強さは人によって異なります。また運動は一時的なものではなく、長期的な生活習慣として取り入れることが重要です。そこで当院は、その人の健康状態に合わせて適切な運動計画を立てることを心がけています。
薬物療法
糖尿病の薬物療法に使用される薬剤は、大きく内服薬と注射薬に分けられます。内服薬には、インスリンの効果を高める薬や糖の吸収を抑える薬などがあります。内服薬でコントロールが困難な場合は注射薬を使用することがあります。一般的なインスリン注射は、体内で自然に分泌されるインスリンを補う役割を果たすのが特徴です。当院では患者様の現在の血糖値、生活習慣、他の健康状態などを考慮に入れて、適切な治療計画を作成します。
痛風・高尿酸血症
高尿酸血症は血液中の尿酸値が異常に高い状態です。尿酸値が高い状態が維持されると、関節内に尿酸の結晶が蓄積し、痛風を引き起こします。痛風は突発的に生じ、関節の激しい痛み、腫れ、赤み、熱感などを数日間繰り返すのが特徴です。
高尿酸血症の主な原因はプリン体の過剰摂取、遺伝的要因、肥満、過度のアルコール摂取、特定薬剤の使用などです。そのため予防と管理には、プリン体が多い食品の摂取制限、健康的な体重の維持、十分な水分摂取などの生活習慣の改善が重要です。
治療法
痛風発作が起こった際は、痛みや腫れを和らげるための薬物療法を優先します。その際、尿酸値を下げる薬の使用は避けるのが一般的です。なぜなら尿酸降下薬は尿酸値の急激な変動を引き起こし、発作を悪化させるリスクがあるからです。
発作が収まった後、高尿酸血症の治療として生活習慣の改善指導と尿酸降下薬の使用を開始します。尿酸結石のリスクが高い場合には、尿アルカリ化薬の併用が考慮されることもあります。
メタボリックシンドローム
メタボリックシンドロームは、高血圧、高血糖、脂質異常症のうち2つ以上を含む状態です。単なる生活習慣病の予備軍というよりも、すでに代謝に関連する異常が顕著に現れている深刻な状態を示しています。メタボリックシンドロームは心臓病や糖尿病への移行リスクを高めるため、早期の対処が重要です。
●メタボリックシンドロームの診断基準
ウエスト周囲径(おへその高さの腹囲)男性85cm 女性90cm 以上かつ
高血圧 収縮期血圧130mmHg以上 かつ/または 拡張期血圧85mmHg以上
高血糖 空腹時血糖110mg/dl以上
脂質異常 中性脂肪150mg/dl以上 かつ/または HDLコレステロール40mg/dl以下
治療法
メタボリックシンドロームの治療は、症状の初期段階で積極的に行うことが重要です。優先すべきは生活習慣の改善で、患者一人ひとりの状態に合わせて適切な体重や食事、運動療法を定め、指導します。一人ひとりの状況に合わせて、適切な治療計画を立てることでメタボリックシンドロームの進行を止めることを目指します。