肛門科とは
肛門科は、肛門及びその周囲に発生する疾患を専門とする診療科です。
非常にデリケートな部位なので、トラブルが起こっても相談しにくい方が多いかもしれません。しかし、便に血が混じっていたり、痛みがある場合は、放っておくと重大な健康問題を引き起こす可能性があります。
少しでも、肛門及びその周囲がいつもと違う状況であれば、迷わず当院まで迅速にご相談ください。
こんな症状はありませんか?
当院の肛門科の特徴
1診断から手術まで一貫して行う
肛門疾患の診断から手術に至るまでの全過程を一貫して行えるのが当院の強みです。診断後に他院へ転院することなく、スムーズに治療を進めることができるので患者様の負担も最小限で済みます。また症状によっては日帰り手術も行っております。
2女性医師による診療が可能
当院では、女性医師も肛門科診療と内視鏡検査を担当しています。そのため、異性には話すことが難しい肛門や排泄に関するお悩みも安心してご相談ください。女性医師ならではの配慮と経験により、丁寧な診療をご提供します。
肛門科で扱う主な疾患
痔核(いぼ痔)
一般に「いぼ痔」として知られている疾患は、正式名称を「痔核」と呼びます。直腸下部や肛門付近の静脈がうっ血して腫れ上がり、いぼ状に膨らむのが特徴です。痔核は排便時に強くいきんだり、出産など肛門に強い負荷がかかったりすると発症リスクが高まります。
痔核は大きく内痔核と外痔核に分かれています。主に直腸内に形成されるのが内痔核で、排便時の出血や脱出を引き起こすものの、痛みはほとんど感じません。一方、外痔核は肛門外部に形成され、時に痛みを伴います。
当院では通常の痔核に関しては、経口薬や局所用の軟膏などを用いた治療を行うのが基本です。しかし、そのような治療でよくならない場合や、痔核による出血や脱出がひどい場合には硬化療法や手術を行います。痔核のタイプや患者様の状態に合わせて最善の方法を選んで行います。
症状
- 排便時に血が出た
- 排便時に痔が脱出する
- 肛門のまわりにイボがある
裂肛(きれ痔)
裂肛はいわゆる「切れ痔」と呼ばれ、肛門上皮の裂傷および潰瘍のことです。硬い便を排泄する際や、下痢が続くと発症リスクが高まります。
主に、急性裂肛と慢性裂肛に分かれているのが特徴です。便秘や下痢などによって裂傷するのが急性裂肛、そのような状況が続くことでイボや腫瘍を伴うのが慢性裂肛となります。当院では、急性裂肛の場合は基本的に薬物療法で改善を目指します。ただ、慢性裂肛の場合は肛門が狭くなることがあり、痛みが続く場合は、肛門括約筋の一部の切除もしくは裂肛切除術が必要です。できるだけ患者様のご要望を汲み取った治療計画を作成し、快適な日常生活への回復をサポートします。
症状
- 排便時に、出血や痛みがある
- 便に鮮血がつく
- 排便後も痛みが続く
痔ろう(あな痔)
痔瘻(痔ろう)は、直腸や肛門周囲に膿が溜まり、炎症を引き起こし、瘻管(ろうかん)が形成される疾患です。つまり、肛門の内側と皮膚の表面がトンネル状態になっています。
クローン病などの腸の病気が原因となっていることがあり、痔瘻と診断された場合は大腸内視鏡検査も必要です。痛み、腫れ、膿が出るなどの症状があれば痔瘻による肛門周囲膿瘍を疑います。痔瘻による炎症が長期間持続することでがん化することがあるため、一般的には痔瘻に対しては手術が勧められます。
症状
- 肛門の周りが腫れている
- 肛門から膿が出る
- 排便時に限らず激痛がある
- 肛門の周りに湿疹や皮膚炎が見られる
肛門周囲膿瘍
肛門周辺に細菌感染が発生し、腫れと強い痛みを引き起こすのが特徴です。緊急で切開が必要な場合もあります。肛門周囲膿瘍から痔瘻への移行は30数%と言われています。
直腸脱
直腸脱は文字通り、直腸が肛門から外に突出している状態です。排便時に過度に力を入れてしまうと発症することが多い傾向にあります。直腸脱は若年層にも生じますが、一番多い患者様の層は高齢の女性です。年を取ると、骨盤底が緩むので、発症リスクが高まってしまうのです。
当院では、患者様の生活習慣や全体的な健康状態を考慮し、再発防止を含めて、直腸脱に対する治療方法をご提案します。
血栓性外痔核
肛門の外側にいぼ状の腫れが生じた場合、血液の流れが悪くなると、血栓が形成されます。これが血栓性外痔核と呼ばれる状態です。座りすぎ、排便時の過度ないきみ、妊娠、肥満、便秘や下痢、そして加齢などの複数の要因によって発症リスクが高まります。特徴的な症状としては、肛門周辺に硬くて痛みを伴う腫れが生じることです。
治療に関しては、内服、外用薬使用や湯治などが有効です。しかし、痛みが強かったり腫れが大きい場合には、血栓を取り除くための小手術が行われることがあります。
尖圭コンジローマ
尖圭コンジローマは、性器や肛門周辺に出現する小さな尖ったいぼ状のウイルス性疾患です。主に性的接触を通じて感染します。初期段階では症状がほとんど現れないため、気づかないことがほとんどです。放置すると、痛み、かゆみ、不快感が増すため、イボに気づいた段階で迅速に当院までご相談ください。
治療には、切除や薬剤の塗布を行います。
肛門周囲皮膚炎
肛門周囲皮膚炎は、肛門やその周辺の皮膚に生じる炎症です。発症要因としては、感染症、摩擦や化学物質による刺激、がんなどさまざまです。
カンジダという真菌が原因となっていることもあり、疑われる場合は検査を行い治療薬を使用します。
肛門科で行う検査
肛門鏡検査
肛門鏡検査によって、肛門内部の状態を詳しく調べることが可能です。まず潤滑ゼリーを塗った指で肛門の状態を確認。その後、肛門鏡を挿入することで、モニターを介して痔核(いぼ痔)や裂肛(きれ痔)などの状態を直接見ることができます。
直腸診
直腸診は、指を用いて直腸内部の異常を探る検査です。特別な準備を必要とせず、短時間で検査を行えるのがメリットです。直腸に発生するがんの多くは、指で届く範囲内に生じます。そのため直腸診は、疾病の早期発見・早期治療の大事な鍵となります。
S状結腸内視鏡検査
浣腸後にS状結腸までを観察するための検査です。大腸からの出血が疑われたり、S状結腸・直腸のがんが疑われた場合に緊急で行っております。
肛門科で行う治療
痔の治療は病気の種類や症状によりそれぞれ異なります。
排便は毎日のことであり、肛門の病気は良性の病気でも生活のQOLを下げてしまいます。
患者様の状態や、生活の状況に合わせて最善の治療法を提案させていただきます。
保存療法
保存療法とは、患部を切除せずに症状の改善を目指す方法です。生活習慣の見直しや投薬治療などを組み合わせるのが基本的な考えとなります。
生活習慣の改善
内痔核や裂孔の原因は毎日の排便習慣が原因になっていることも多く、便秘を予防する、長時間トイレに座らない、排便時に強くいきまない、ように心がけることが重要です。既存の痔を悪化させないだけでなく、新たな痔の予防にもつながります。
投薬治療
痔の症状を和らげるために、座薬や軟膏などの外用薬を使用します。また、痛みや腫れがひどい場合は、内服薬も処方します。
排便習慣を改善することが大事であり、便秘や下痢の方は症状に対するお薬の処方も行います。
手術
保存療法で改善しない場合は手術を行います。
手術は腰から注射して下半身麻酔で行います。不安や緊張が強い場合は鎮静剤(眠くなるような注射)をして、できるだけ安心して手術を行っていただけます。手術方法は病気により異なりますが、ほとんどの手術は麻酔も含めて30分〜1時間程度です。
硬化療法(ジオン注射)
2006年3月に新たに承認された注射療法「ジオン」を導入しております。
ジオン注射とは、「脱出を伴う内痔核(いぼ痔)」の治療に効果的で、肛門の痛みを感じない部分に注射をするため、痔を切らずに治療ができます。
治療は麻酔を含めて約30分で完了するので、通常の外科手術に比べて、身体的・精神的な負担が最小限に抑えられるのがメリットです。